中国のEC(ECommerce:電子商取引)産業にとって、2018 年は極めて意味のある年となりました。すなわち、EC産業における重要な動向が二つあったのです。まず、一番目に、中華人民共和国電子商務法(以下「電子商務法」という。)及び関連法令の公布により、中国におけるECの法制度が整いました。二番目に、各種の輸入拡大施策によって、越境EC産業における拡大が期待できることです。これまでのEC関連産業の発展の経緯をみると、2014年までの低迷を経て、2014 年以降は高度成長の時代が訪れた印象を受けます。その後、2019年の電子商務法の施行開始を機に、より中国のEC産業は安定的成長を遂げるものと考えられます。

以下のグラフは世界の各国別BtoC電子商取引市場規模を整理したものです。世界的に見ても、中国は米国と共に市場規模が大きく存在感があります。(出典:UNCTAD、2019年10月10グラフ差替え)

中国のインターネット人口は、8.02億人の規模(日本は約1.18億人)であり、ECでは中国は日本の約14倍の市場規模となっています(出所:World Bank, Euromonitor, Internet World Stats, NET INDEX EXPLORER, World Economic Forum, eMarketer、ITU、総務省「通信利用動向調査」に基づいて算出しています)。また、固定系とモバイルを合わせたインターネット普及率は、未だに56.7%(日本は93.3%)と伸びしろがあります。そして、これからの所得上昇やインターネット環境の整備等に伴って、インターネット人口が増加することは間違いないと考えられるため、市場規模のさらなる拡大が見込まれます。

拡大する中国のEC市場規模

中国における2018年の越境EC市場規模は、62,938 億円、対前年比変化率は 5.9%増で、2019年以降も拡大傾向にあると考えられます。その背景には、インターネット人口やインターネット浸透率拡大に伴う越境EC市場へのインパクトが考えられます(出所:Analysys International Enfodesk, “2018-2021 China Cross-Border Retail Ecommerce Market Forecast Report” as cited in press release, 2019年2月1日。グラフ内数値の単位は億円、16.5円/中国元で計算しています)。2021年には越境ECの市場規模が81,571億円に拡大すると見込まれています。

国内ECランキング

iResearch Consulting Groupによる中国における主要なBtoC -EC事業者の市場シェアを調査した結果では、EC事業者の筆頭は中国EC最大手のアリババ集団の「天猫(Tmall)」で52.5%のシェアを持ち、続く2位の「京東(JD.com)」の31.3%を加えると、上位2社で市場全体の 83.8% を占める寡占状態であり、3位以下を大きく引き離しています。 (出所:iiMedia Research, “2018 China B2C Ecommerce Market Report,”Nov 15, 2018)

越境EC(跨境电商)ランキング

中国における2018年上半期のサイト別中国越境EC売上高シェアでは、第1位はネットイースの子会社が展開する越境ECサイトの「Kaola.com(網易考拉海購)」26.2%、第2位がアリババ傘下の「Tmall Global(天猫国際)」22.4%、第3位が「JD Worldwide(京東全球網)」13.4%、第4位が「vip.com(唯品会)」12.5%と続きます (出所:iiMedia Research) 。中国国内ECサイトにおける「Tmall(天猫)」と「JD.com(京東)」の寡占状態に比べると、越境ECでは勢力図が異なり、網易考拉海購(ネットイース・コアラ)がトップのプラットフォームとなっています。網易考拉海購は、中国ポータルサイト大手の網易(ネットイース)が 2015 年に始めた越境EC事業です。

天猫(Tmall)と京東(JD.com)が中国の主要国内ECサイト

EC事業者の上位2社である「天猫(Tmall)」と「京東(JD.com)」により、中国のEC市場は寡占状態にあります。この点について、独身の日に着目して考察してみます。11月11日はシングルを示す「1」が4つ並ぶことから、中国では「独身の日」または「双十一」(ダブルイレブン)と言われます。2009年、独身の人々にオンラインショッピングの楽しみを提供しようと、アリババ集団が割引キャンペーンを仕掛けたことが契機となり、この日はEC事業者が大幅な割引によって売上を競い合う大バーゲンの日となりました。したがって、通常の営業活動に比べて「独身の日」の動向はEC事業者の競争力を明らかにする重要なKPIといえます。アリババ集団はこの日を「11」が並ぶことから「双十一」と名付けて商標登録までしている力の入れようです。2018年は双十一セールが初めて開催されてから10周年ということもあり、中国国民のみならず世界からも注目が集まりました。次のグラフは直近5年間の双十一セールの流通総額の推移(単位は億元、出所:中国電子商務研究センター)です。2018年は実に3,143億元(約5兆1,860億円:1元=16.5円で計算)に達しました。この売上高は、2013 年の約4倍に相当する値です。また、日本の物販の年間EC(BtoC)売上高は約9兆円ですので、日本の年間売り上げの半分以上を、たったの1日で売り上げることに相当するわけです。

次の表は、2018年の双十一セールの概要を示したもの(出所:中国電子商務研究センター発表データ等を基に作成)です。モバイル端末経由の流通総額は2,942億元(約4兆8,543億円:1元=16.5円で計算)と流通総額の93.6%を占めています。スマートフォン比率が非常に高い点が特徴です。地域毎の取引構成比では、北京、上海、広州等を含む 東部地域が90.9%と圧倒的に高い比率となっています。

流通総額 3,143 億元(約 5 兆 1,860 億円) 対前年比 23.8%増
モバイル端末経由の流通総額 約 2,942 億元(約 4 兆 8,543 億円)(全体の 93.6%)
地域毎の取引構成比 東部地域 90.9%        中部地域 5.9%      西部地域 2.8% 東北地域 0.4%
取引規模上位商品カテゴリー モバイル・デジタル、家電類、スキンケア類、食品類、ベビー・マタニティ
宅配荷物数 13.4 億個

ここで、EC事業者別の売上に目を移すと、天猫(Tmall)と京東(JD.COM)の2社で実に市場全体の約85%を占めています(出所:中国電子商務研究センターなどを基に作成)。両社とも好調であったことが見て取れ、天猫や京東による二強支配の市場構造は変わらず、一方で設立間もない拼多々社のような急成長のEC業者や、Amazonのような越境ECに長けた業者の存在感も高まっていることが、最近の業界の特徴のひとつとして印象づけられました。また、越境ECの国別流通総額では日本が1位、米国が2位であったと推定されています。

天猫(Tmall)

中国EC市場(BtoC)の5割以上のシェアを占めるECサイトが天猫(Tmall)です。天猫(Tmall)は2013年にアリババグループが開設したショッピングモール形式のBtoCのECサイトです。読み方は「テンマオ」です。アリババグループでは淘宝網も有名ですが、淘宝網がCtoC、天猫(Tmall)はBtoC向けのECサイトと使い分けています。淘宝網・天猫(Tmall)を含めたアリババグループ全体の2017年の年間取扱高は約84兆円とされています。楽天の年間流通総額が約3兆円、Amazonグローバルの流通総額約30兆円(推定)と比べても如何にアリババが巨大な規模の取扱いをしているかがわかります。

そもそも淘宝網というECサイト(CtoC)で成功していたアリババグループが、Cにおけるカニバリを恐れずにあえてBtoCのECサイトを立ち上げたのは、偽物や非正規品の氾濫という問題に直面していたことが理由と考えられています。淘宝網は手数料無料で手軽に出品できるため爆発的な人気を博しましたが、一方で粗悪品の横行を招いたことも事実です。そこでアリババグループでは、品質向上を目指して出品業者に審査を課し、合格した事業者が出店できるシステムを構築しました。このシステムにより出品されるモールが天猫(Tmall)です。アリババグループは天猫(Tmall)により良質高品位な商品を仕入れることができ、出品業者は厳格な審査に合格したという資格を手に入れ、購入者は安心してショッピングを楽しめるように改善されました。

天猫(Tmall)には世界的な有名ブランドやグローバルカンパニーが出品していますが、海外の一般企業が天猫(Tmall)の審査に合格することは極めて難易度が高く、多くの海外企業が出品を断念するという状況でした。このような厳格な試験を出品者に課しているのは出品される商品の品質を維持するためであり、顧客を最重要とする姿勢の表れですから、安易に海外企業を参入させることが許されない経営判断でした。そこで、日本企業をはじめとする良質な商品を有しながらも、審査に合格することがかなわない企業に対する救済措置として、天猫のセカンドラインを設定するという戦略が立案されました。それが、天猫国際(Tmall Global)です。セカンドラインとはいっても品質レベルを下げることを良しとしない為、品質の高い品揃えを可能とし、主に海外企業が得意としないオペレーション面を天猫国際(Tmall Global)サイドが補完するという業務形態をとります。この方法により従来に比べ海外企業の出店が比較的容易になり、中国における越境ECプラットフォームとして確固たる地位を築きつつあります。日本からも資生堂、小林製薬、花王、カネボウ、サントリー、三越伊勢丹、ミキハウス、カルビー、象印、タイガー、ライオンなど名だたる企業が天猫国際(Tmall Global)の審査に合格して出店しています。

京東(JD.com)京東全球購(JDWW、JD Worldwide)

世界一の市場規模を誇る中国EC市場(BtoC)において、トップの天猫(Tmall)とともに市場をけん引するのが、25.4%のシェアを占めて2位のECサイト京東(JD.com)です。天猫(Tmall)が50%を超える巨大なシェアを持つため、大きく引き離されているとはいえ、京東(JD.com)の年間取扱高は約21兆円と巨額であり、Amazonグローバルが全世界で取り扱う規模に匹敵するほどです。2018年の年間収益は4620億元(約7.7兆円)で、Non-GAAP純利益は35億元です。

京東(JD.com)は、2004年に現CEO劉強東がPC機器専門のECサイト京東多媒体網として創設し、その後携帯電話や家電販売家など取り扱い品目を広げ、現在ではあらゆるジャンルの商品を取り扱う総合ECサイトになっています。ユーザーにとって、デジタル家電を購入する際に気になるのが、購入後のサポートですが、京東(JD.com)では購入後7日以内であれば理由を問わず返品が可能で、15日以内に品質に問題があれば返品・修理を受け付けています。この充実したアフターケアがユーザーの安心感につながっています。

京東(JD.com)は天猫(Tmall)とは異なるビジネスモデルを持ち、独自の発展を遂げています。京東(JD.com)は日本のアマゾン型で、自社モール内に京東(JD.com)名義で商品を販売するモデル(いわゆる仕入販売)が中心的な販売方法です。そのため、商品売上の比率(京東(JD.com)自社事業収入)が91.4%(2016年)と高い状況になっています。

京東(JD.com)は家電売上が全体の50%を占めているため、中国国内では、総合通販というよりも家電専門モール的な認識を得ています。自社商品の取扱比率が高い為、Amazonと同様に大規模な物流部門を持っており、中国国内に550の倉庫を所有(2018年)し、約6,900ヶ所の配達センター(2016年)を運営しています。日本最大の宅配業者であるヤマト運輸(約6,800センター、配達員数約60,000人)と比較しても物流部門の規模の大きさが窺えます。2018年度末時点での従業員数は約17万人で、配送員(2016年83,512人)、IT要員(2016年9,091人)と膨大な人員を擁しており、独自に物流部門を運営することで、当日配送や翌日配送といったスピーディな配送を可能にしています。ロボット技術を駆使した無人物流倉庫の実現や、無人配送車・ドローンを使った配送自動化の研究といった、先進的な取り組みも積極的に行っており、2016年に中国の農村部で世界初の商用ドローン宅配便を実用化しました。2018年には、ドローン配送サービスを目指す楽天が、京東(JD.com)のドローンと地上配送ロボットを導入することを発表しています。

京東(JD.com)はスマートフォン向けチャットアプリWeChatを運営するテンセントグループの一員であり、近年の注目すべき動向として、WeChat上のECモールとの連携が挙げられます。2018年、女性向けECの美麗連合グループと新しく合資会社を設立し、WeChat上のECモールをフルリニューアルすると発表しました。美麗連合グループは淘宝(Taobao)向け口コミサイトおよびファッション専門の通販モールとして有名です。W11以降、美麗連合グループはWeChatのミニプログラム内で8,000万人ものユーザー数を獲得し、成功事例となっていました。京東(JD.com)としてもSNSマーケティングで成功している美麗連合グループと組むことで、市場拡大が狙えると期待されています。これまで京東(JD.com)は基本的にアマゾン型のビジネスを進めていましたが、個人商店や企業をモールに取り込むことで、淘宝(Taobao)や天猫(Tmall)のようなモールになることがイメージされます。

なお、ミニプログラム(小程序)とは、2016年にスタートしたWeChat内で使用可能なアプリで、App Storeからアプリをダウンロードをしなくても、WeChatのアプリ内で使用できます。ユーザー数は現在なんと1.7億人(WeChatのユーザー数は9.8億人)、すでに約57万のアプリが存在します。

WeChat上のECモールが波に乗れば、差をつけられている天猫(Tmall)を猛追することが期待できます。

最近ではアパレル関連や食品、生活用品などにも力を入れ、2016年にはデジタル家電とその他商品の比率が逆転していますが、それでもデジタル家電を買うなら京東商城というブランドイメージを確立しています。

ジャンル別の伸び率で注目したいのは、2016年からベビー・マタニティー用品の成長率が緩やかになる中、生鮮と越境ECの伸び率が高いまま推移していることです。これは中国国内での生鮮食品のネット通販のニーズが常に高いことを示しています。現状、越境ECで生鮮食品を扱うのは物流上、難しいのですが、もし可能になれば、市場には大きなニーズが見込めます。

天猫(Tmall)が2014年に越境ECサイト天猫国際をオープンしたのに続いて、京東(JD.com)も2015年に京東全球購(JD Worldwide)をオープンしました。京東全球購(JD Worldwide)における商品別売上比率では、マタニティ/ベビー関連が24.6%、デジタル製品/家電が24.6%、美容関連が22.8%となっています。マタニティ/ベビー関連と美容関連の比率が高いのは天猫国際と共通しています。しかしながら、デジタル製品/家電の比率も高いのが京東全球購(JD Worldwide)の特徴で、消費者からの信頼の高さが垣間見えます。また、京東全球購(JD Worldwide)では日本企業の誘致に力を入れており、2015年に日本製品専門の日本館をオープンしました。資生堂、花王、ソニー、キヤノン、カシオといった有名企業が多数出店しており、興味深いのは楽天が出店している点です。実は楽天は2010年に百度と設立した合弁会社を通じて、中国のインターネット・ショッピングモール「楽酷天(らくてん)」を展開しましたが、わずか一年半で撤退しています。前回の反省から入念に研究したと思われ、今回は順調に推移しているとのことです。なお、楽天は2016年6月にネットイースの展開するECサイトKaola.com(网易考拉)とも戦略的提携契約を結んでおり、中国市場への傾注が読み取れます。

Amazonは中国越境EC市場で苦戦

2019年4月、米EC最大手のアマゾンが中国本土向けのEC事業撤退を発表し話題となりました。アマゾンはこれまでに日本を含め世界の数多くの国・地域へ進出し市場を拡大し続けてきましたが、巨大な市場規模が存在するにもかかわらず、中国では大きな挫折を味わうこととなったわけです。

アマゾンは2004年、中国のECサイトを買収した上で当該買収先を介して中国市場へ進出しました。その後買収先企業はアマゾン中国(亜馬遜中国)に名称変更しています。現在の巨大な中国国内EC企業群が未だ創業前後の時期に、アマゾンは巨大市場へ先手を打つかのようにいち早く進出したのですが、それまでの豊富な海外進出経験を活かすことができず、予想外の苦戦の連続となり、アリババや京東など中国国内EC企業に猛追され、激しい競争の末に淘汰されてしまいました。現在の中国市場シェアはすでに1%以下にまで落ちています。

アマゾンはアメリカ市場で5割以上のシェアを占め、日本市場でも首位(日本流通産業新聞、2017年10月~2018年9月のEC売上高ランキング)に立っており、日本および世界のEC業界で最も存在感のある成功企業の1つです。アマゾン中国撤退の発表を受け、様々なメディア/専門家が原因分析をしていますので、その一部を紹介します。

ユーザエクスペリエンスが悪い。分かりにくい。習慣に合わない。文化理解が不足

購入フローは突っ込みどころが多すぎてスムーズじゃない。中国ECと比べ物にならない。

アプリの調子が悪すぎ。

高価格。(アリババとの比較)

低サービス。(京東との比較)

現地への権限移譲/現地最適化

中国人チームを信用しない。文化理解不足、ニーズが掴めない。

どのくらいの中国人社員がいるのか。8万人のアリババと18万人の京東と張り合えない。

宣伝が弱い。(アリババ/京東との比較)

アリババ会長ジャック・マーのコメント

アマゾンは一つの帝国のようで、仕入れから販売まで全ての行程を自らコントロールする。

アリババはアマゾンのやり方とは異なり、自社ECモールに出店する企業に権限を与え、彼らのサポート役を務めることに注力している。

京東会長劉強東のコメント

アマゾンの中国総経理はいつも外国人が担当していた。しかも中国で生活したことのない外国人。

変化の激しい中国市場において、現地社員に権限を与えるようにしないといずれ問題が起きる。

アマゾンは中国でのEC事業を停止すると発表しましたが、Kindle/越境EC事業は継続する方針とのことです。中国人の海外製品に対する信頼は回復しつつあり、越境ECを支援する当局の姿勢が見えるようですので、アマゾンは、越境分野での挑戦を継続するのではないかと考えられます。

中国の越境ECで存在感を見せる网易考拉(ネットイースコアラ)

2019年4月、小林製薬は中国の越境ECプラットフォーム網易考拉海購(Kaola.com)と事業提携契約締結のセレモニーを行いました。楽天は2016年6月に網易考拉海購(Kaola.com)と戦略的提携契約を結び、中国市場への傾注を明らかにしています。さらに、花王は2016年11月、ネットイースと製品販売に関する契約に合意し、網易考拉海購(Kaola.com)に旗艦店をオープンしました。

中国の2大EC企業天猫(Tmall)と京東(JD.com)は2社でシェア80%以上を握り、アマゾンの全世界売上を遥かに凌ぐモンスター企業です。その2社は越境ECにおいてもそれぞれ天猫国際(Tmall Global)と京東全球購(JD Worldwide)を展開しており、国内ECの補完的な位置付けにもかかわらず、越境EC分野でも4強に数えられています。しかしながら、越境EC分野では、この2大モンスター企業を押さえて、網易考拉海購(Kaola.com)がシェアトップの座に着いています。加えて、有名な日本企業の出店が相次いでいるのです。

網易考拉海購(Kaola.com)は、中国のIT企業であるNetEase,Inc(ネットイース)の子会社であるHQG Limitedが2015年1月に開設し、現在、極めて人気の高い越境ECサイトという評価を獲得しています。販売カテゴリーとしては、マザー&ベビーグッズ、美容化粧品、生活用品、健康食品、輸入食品、ファッションバッグ、電化製品等を取扱っています。設立からわずか3年という短期間で、越境EC業界のリーディングカンパニーに成長しましたが、市場調査コンサルのiiMedia Rearch(艾媒諮詢)によると、海外通販歴1年以下の新規ユーザーの利用率が全体の1/3と高く、初心者からの支持を獲得しています。網易考拉海購(Kaola.com)で販売される商品の評判は、高品質/品揃え豊富/価格が安いというもので、さらに、サービスが優れているともいわれています。

すでに日本のほか、米国、ヨーロッパ各国、韓国、オーストラリアなどの多数の企業が中国への進出を希望しており、前述のように、楽天は網易考拉海購(Kaola.com)内に旗艦店を出店し、中国人消費者の関心が高い日本製の高品質な人気商品を出品している他、美容・健康関連商品にも力を入れています。2017年11月には、日本空港ビルデング株式会社が、羽田空港海外旗艦店を出店しました。このように日本の大手企業が次々と旗艦店を出店していることからも網易考拉海購(Kaola.com)のECサイトとしての本質的な優位性と日本人からの受けの良さが存在することを窺わせます。

網易考拉海購(Kaola.com)が中国国内で強い信頼を得ているのは、海外の商品を直輸入し、中国人が求める高品質の商品や本物が確実に入手できることに由来しています。従前、海外の本物を手に入れるためには、中国人が自ら海外へ買い物に行くことが必要でした。それが、海外の本店で買うのと同じ品質の商品を、海外で購入するための時間と手間と費用を掛けずに、安心安全に中国国内のECサイトで入手できるようになったということです。つまり、海外ブランドの直営店が国内にオープンしたのと同じことがECサイト内で実現したということで、この方式を実現させるためには、そもそも信頼の置ける取引先との提携が必須だったのです。

次々と提携する日本企業が多いのも、ネットイースの信頼性の高さに起因するのかもしれません。

冒頭で紹介した小林製薬との事業提携によって、網易考拉海購(Kaola.com)は「今までよりもっと中国の消費者に豊かな輸入商品を提供できるプラットフォームに近づいた」と語っています。中国市場の消費水準は年々向上しており、特に日用品の消費市場には、新たな欲求の萌芽という変化が見て取れます。消費者は商品の効能、原材料の安全性や使い心地などに対する興味関心を一層高めている様子ですし、多くの消費者は「自然・健康・環境に良い・高級感のある」といった商品にこだわりを持つようになっているのです。我々日本人が近年経験したのと同様の当然の変化です。

小林製薬と網易考拉海購(Kaola.com)の事業提携は、小林製薬の中国における認知度を向上させるだけではなく、網易考拉海購(Kaola.com)プラットフォームで取り扱う日本商品の品揃えを益々豊かでかつ日常生活に密着した必需なものにするでしょう。そして、消費者が遥々日本までお越しにならなくても、絶対の信頼と安心を持って日本商品をお買えるようになりますので、中国国内の消費者の方と網易考拉海購(Kaola.com)プラットフォームはもとより、小林製薬にとっても提携の意義を存分に感じさせる取り組みだと感じさせます。

現在までに、網易考拉海購(Kaola.com)は、全世界で1000以上の有名ブランドと既に提携を済ませており、今後も海外の良質なブランドを中国に招致し、中国消費者の生活品質の向上に貢献していく考えが示されています。今回、百年以上の歴史ある日本の国民的ブランド小林製薬との間で粘り強く交渉を続け、提携に至ったことからも、網易考拉海購(Kaola.com)の確固たる決意が感じられます。提携により小林製薬と網易考拉海購(Kaola.com)は共々に進歩と発展を企図し、消費者にとっての本質的な「お得と利便性」を惜しみなく提供すると共に、企業間の互恵共栄を実現する方針とのことです。

急成長から安定成長へと移行しつつある中国市場にあって、中国の消費者とマインドも大きく変化しています。その変化をビジネスチャンスとすべく、今後も日本企業と中国企業の意義のある提携が増えていくものと考えられます。