越境ECとは

  • 越境ECとは、インターネットの通販サイトを通じて、海外の商品を購入することを言います。
  • 消費者は、越境ECを利用して、自国では買うことができない海外の日用品や家電などを簡単に買うことができます。販売する企業サイドにとってもメリットは大きく、海外へ進出しなくても海外の消費者が自社通販サイトで買い物をしてくれるため、国内販売に比べて販路が格段に広がります。
  • 投資を抑え、新たな顧客開拓による拡販が期待できる戦略と言え、近年期待されているECビジネスの形態として、日本においても取り組む企業が増えてきています。
  • 背景には世界規模でのインターネット/スマートフォンの普及が挙げられています。いつでもオンラインに繋がることができ、ECサイトにより誰でも手軽に買い物ができるようになりました。

越境ECの市場規模

世界の越境EC市場規模は、2019年に前年比22%増の8,260億ドル(約90兆円)の見通し(経済産業
省)です。
➢ 日本の商品は米中向けの販売額が特に大きく、2019年はいずれも2ケタ成長が予想されています。楽天
等の大手インターネット通販を通じて、日本のメーカーや小売りが越境ECサービスを拡大しつつありま
す。

出所:経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」(2019年)

越境EC増加の要因(訪日観光の影響)

訪日外国人旅行者と越境ECには密接な関係があると考えられ、日本旅行中に商品を買うだけでなく、帰
国後もネットで気に入った日本製品を買うことが増えています。
 越境ECを利用する理由として、「日本に旅行をしたときに購入して気に入った製品だから」とする調査
結果もあり、商品に触れた経験、自分自身の目で確認できた経験、信頼できると認識した経験が起点と
なって越境EC利用の消費行動に移行しているようです。今後も訪日外国人客が増加し、日本での購入経
験が増えることに伴い越境EC の利用者数および市場規模拡大も期待されます。

訪日観光をきっかけとした越境ECの規模(単位:億円程度) 上位5カ国※注うち中国
①自身の訪日観光がきっかけとなった購買額6,3003,500
②家族や知人の訪日観光がきっかけとなった購買額1,5001,200
越境ECを通じた日本製品購買の全体額15,50011,100
※注:訪日外国人旅行者数上位5箇国・地域全体  

出所:観光庁「平成29年度観光の状況」(2018年6月5日)

出所:観光庁「平成29年度観光の状況」(2018年6月5日)

国内ECとの違い(主なハードル)

越境ECでは、海外へ商品を販売することから、国内ECにはないハードルがあります。ここでは、特に押
さえておきたい3点をご紹介します。

  1. 海外に配送できる商品か?
    お客さまは、「商品が確実に届くのかどうか」を気にされます。同じ商品でも、輸出先国によっては規制対象となる場合があるので、注意しましょう。
  2. 配送会社を賢く選ぶ
    低価格で、早く安全に商品を配送してくれる会社を選ぶことが大切です。特に配送コストは、競合他社と比較した際の商品価格に影響を与えるので、複
    数の配送会社から見積りを取得して、慎重に選択しましょう。
  3. 商標登録
    自社の商標が、輸出先国ですでに登録されていないかどうか確認しましょう。知らずに販売してしまうと、商標権の侵害で訴えられるケースがあります。
主なハードル 留意事項(例)
法令 禁制品(国ごとに定めがある)
その他法令による制限(植物検疫、動物検疫、薬事法、食品成分など)
輸出入制限品(ワシントン条約など)
特別な手続(ライセンス)、事前登録の有無
自社の商標が輸出先国ですでに登録されていないか
物流 通関書類(インボイス)の準備
壊れものの取扱い(梱包方法の工夫が必須)
配送会社ごとの配達可能地域や重量制限など
商慣習やカントリーリスクなどによる配送規制
関税・諸税 輸出先国や取扱商品によっては関税が課される 付加価値税(VAT)の存在(消費者は、関税を含 めた最終購入価格に注目)
言語 直訳では伝わらないケースが多く、国や文化などに応じた意訳が必要 カスタマーサポートは、輸出先国の言語による対応が求められるケースがある
決済・為替 各国の商慣習に応じた決済方法の導入(消費者へ安心を与える) 為替変動リスクへの対応(価格に反映、自社で吸収など)

出所:日本政策金融公庫「拡大する越境ECを活用した海外展開」(2018年2月13日)

越境ECで成功している会社の特徴

越境ECを日本側の視点で取り組むのではなく、対象国の視点で取り組むことがポイントです。

自社に適した越境ECシステムのタイプ

  • 越境ECには、大きく分けて「モール」と「自社EC」の2つのタイプがあります。「モール」は、他社が運営する、海外向け商品を販売するサイトに出店する方法です。例えば、AmazonやeBayなどへの出店が代表的です。
  • 「自社EC」は、自社が運営するサイトに出品する方法です。サイト構築を全て自社で行う場合と、支援ツールを用いる場合があります。
  • 選択するタイプを誤ってしまうと、軌道修正に大幅なコストと労力を要することになります。各タイプ
    別のメリットとデメリットを把握した上で、越境ECタイプを選択しましょう。
 メリットデメリット
モールサイト構築や受注管理などを自社で行う必要がない。
ユーザー数が多いモールへ出店すれば、自社ECに比べてプロモーションコストが抑えられる。
自社ECに比べて、投資回収期間が比較的短い。
自社でマーケティングを行うことができないため、販売ノウハウが蓄積されにくい。
モール上に競合商品が多く、価格競争が激しい。
自社EC運営、販売ノウハウが自社に蓄積される。
顧客情報を直接入手できるため、マーケティングに活用できる。
モール型とは異なり、売上ロイヤリティが不要。
サイト構築から受注管理、決済まで自社で対応するため、初期投資額が大きく、人的リソースが必要となる。
自社でプロモーションを行わないと、集客ができず、広告費用がかさむ。

輸出先国の市場や競合の動向を知る

インターネットを利用した事前調査の方法を紹介します。

  1. 自社商品のニーズや現地での競合商品を調べる
    「GoogleTrends」を活用した調査方法がおすすめです(中国、韓国、ロシアを除く)。検索したキーワードの期間別や国別の注目度を把握することができます。主要モール(Amazon,eBayなど)を活用して調査を行う場合は、商品検索の欄に「Japan import best seller」などと、英語で入力する方法が効果的です。どのような商品がよく売れているかが分かります。また、具体的な商品名で検索して、表示された商品の価格帯を調べたり、商品リスト上位店舗の価格帯を確認したりする方法も有効です。さらに、「Terapeak」を活用することで、eBayで売買されている商品のトレンドを調査することが可能です。
  2. 競合他社の販売戦略を調べる
    「SimilarWeb」という、競合他社のサイトへのアクセス状況などを可視的に確認できるサイトの利用がおすすめです(一部無料機能あり)。トップページの検索欄にアクセス状況を確認したいウェブサイトのアドレスまたは名称を入力すると、「アクセス数」、「アクセス元」、「ユーザーの地域」、「検索ワード」、「競合サイト」といった項目の結果が表示されます。例えば、競合先と位置付けた数社のサイトについて、「SimilarWeb」を活用して各社の共通点や相違点を分析することは、マーケティング戦略を練る際の参考になるのではないでしょうか。

出所:日本政策金融公庫「拡大する越境ECを活用した海外展開」(2018年2月13日)

越境ECの開始手順例

越境ECで失敗しないためには、事前準備をしたうえで、越境ECを開始しましょう。